001 愛してる(あいしてる)


本当に感謝しています

あなた達は私を生み、ここまで育ててくれました―・・・

その後の長い言葉なんて いらない

大切なのはこういうこと
 
Father
And
Mather
I 
Love
You

私達は家族という絆で結ばれた

かけがえのない存在なのだから




002 悪魔(あくま)


いつ生まれたのかは分からない
それは突然意思を持ち 話し始めた


他の人と話すあなたを見ると
私しか見ちゃだめ、と傲慢が私の目を借りて泣き出す

またねとあなたと別れを交わす時には
嫌だずっと居てよ、と我侭が私の口を借りて叫ぶ

あなたといると
どこからか告げ口をして
平常心を取り攫う私の悪魔


あまりにも幼稚なことば
でもそれは
私自身の本当の感情

だからこそ
耳を貸してはいけないの
操られたらいけないの


あれはただの幻
恐れを知らない自我の戯れ

お願い今すぐ黙ってて
私から出て行って


(こんなことであなたを傷つけたりでもしたら)




003 雨の中(あめのなか)


どうして私はあの人に
酷いことを言ってしまったのだろう

カッとなってその場から飛び出したら
空も涙を流してた

しとしと しとしと

どうしようもなく佇む私を
雨はゆっくりと濡らしていく
思い出すのは後悔の気持ち

飛び出すんじゃなかった
意地張るんじゃなかった

だって離れてるだけで
こんなにも愛しく思う

本当は

あの人に逢いたい
逢って謝りたい

しとしと しとしと

気付いたら私自身も泣いていた

優しい雨は
行っておいでと私の頬を撫でて
ゆっくりと
心のわだかまりを溶かしてくれた




004家路(いえじ)

出て行ったきり
大抵のひとは皆

帰るから といって
帰ってこない

そういうのを聴いていたから
必ず戻ると固く誓って
僕は家を後にしたんだ

まだ見えてるよ
離れてしまったけれど
遠くに灯りが見えている

まだ帰れるよ
だから待っていて欲しい




005 いつか終わる(いつかおわる)


世界の週末が訪れたとき
僕は何をしているんだろう

街も森も海も
徐々に色彩を奪われ
もう二度と昇らない日が暮れてゆく

羽をもがれた天使たちは
無機質な音をたてて嗤ってる


どうだ これがお前たちの望みの結果だ

愚かな人間共は自ら破滅を招き

滅んでゆくのだ


世界の終末が訪れたとき
僕は何をしているのだろう

違う こんなはずじゃない
僕の未来はこんなものじゃ・・

気付いたときは もう遅い

地球は歪んでゆく
過ちは繰り返される
救ってくれる神なんて いない

未来を託された僕たちに

出来ることは憂えることだけなのだろうか
 



006 一方的(いっぽうてき)


あなたの元へ
この気持ちを真っ直ぐ伝えたいのに

好き と小さく呟いたその言葉は
どこへ行くでもなく
浮かんで 消えた

こんなに抑えきれない気持ちなのに

叫んでも叫びきれない程なのに

想いをのせた私の紙飛行機は
あなたの窓まで届かないみたい

あなたまでは一方通行 一度好きになったら戻れない
言葉はひとりでに積もっていって
大渋滞を引き起こしている

たったひとつの言葉
たったひとつの紙飛行機

あなたの元へ どうか届いて




007 意図した省略(いとしたしょうりゃく)


別れは唐突な方がいい?


よく考えたら 嫌いになる前に
別れることができるなんて
幸せなのかもしれない

どちらにしろ
また君を傷つけてしまう結果になってしまった

何度も何度も同じことを繰り返して
別れがどんなに辛いのかを
自分が一番分かっているはずなのに

懲りずに足を踏み入れてしまったということは
僕は結末さえ了承してしまったのだろうか


それでも僕は
今までの思い出を無駄だと思ってない

君と話すだけで楽しかった
心が通じ合っていくのが嬉しかった

だから

出来るなら

さよならは言いたくないんだ
やがて君は僕のことを忘れてゆくとしても


それと
ひとつだけワガママを言うならば
思い出は片隅にとっておいてくれないか?

過去のことなんて
どうするかは君の勝手だろうけど
僕にとっては 全部
かけがえのない時間だったんだ


別れは近付いている
それは変えられようがない事実

でも「別れ」とは呼びたくないから

君には何も伝えない


別れが唐突に訪れるように

再開が唐突に訪れることを願っているから





008 嘘つき(うそつき)


愛してる

そっと抱きしめられたとき
あなたの唇から零れ落ちたそのことばは

妙に鼓膜に反響して
何故か嘘ぶれて聞こえた


そう呼ばれるのに
その意味はあまりにも重く
私には似合っていないように思えて

時々 不安に駆られるの


素直に聞き入れられない私は
そのことばの意味くらいに
満たされていないみたい

私は
あなたを満足させるだけの
ただの身代わりじゃないよね

自分に言い聞かせて
信じ込ませるために
ひたすらに私はあなたを求める


離れ際に垣間見た
ちらと覗いた横顔の
あなたの瞳は澄みきっていて

逆に気持ちが読めない

でも その瞳も
曖昧な微笑も
私にとっては愛しく思えるのだから
私はただ 受け入れるしか術はない


ねぇ 誰か教えて

分からないの


愛してる と言った
あなたが嘘つきですか

私もよ  と返した
私が嘘つきなのですか




009 英雄(えいゆう)


もし

みんなが僕の言うことを聞いたら

働けと言えば働く
眠れと言えば眠る


だったら

戦うなって言って
戦争がなくなっちゃえば

止めた僕は英雄でしょ?



そうなればいいのに
僕ならカミサマのお手伝いができるよ

そうだ
僕がカミサマやればいい

みんな幸せにしてあげる
嬉しくてきっと
ありがとうって言ってくれるね!



そしたらね

すごいねってお母さんに褒めてもらって
世界のテレビに映って
お金をたくさんもらったら

そうしたら
欲しかったゲームを買うんだよ!



《桜の花びらが地面につもる午後のとある駐車場にて
小さい子供がこのようなことを言っていた
子供は想像の中で
いつだって英雄になれる
しかし本当に手に入れたいのは
大人が考えるような
ふんぞりかえるための地位ではなく
名声と名誉でもなく
お母さんに褒めてもらうことや
たったひとつの小さなゲームカセット
それだけだったりする
ああ私もそんなこと考えてたな、

(目の前の子供たちに対しての懐かしい心境・考察)》




010 オルゴール(おるごーる)

 
何処からか聞こえてくる

 
ゆっくりと


ゆっくりと流れる 哀しいワルツ

君が好きだったこの曲に
僕が魅入られたのはいつからだろうか

流れるそのメロディに乗せて
君の幻が見えたような気がした
もう二度と逢うことはないのだけれど

罪の音楽をまた聴くために
その小箱の螺子を巻いたのは誰?


小箱が動かなくなるにつれて
君のことなんか 遠く消えていったら
どんなに楽だろうか
もう忘れないといけないのに
このメロディに強く引き付けられる

罪の音楽をまた聴くために
その小箱の螺子を巻いたのは誰?


遠い記憶と共にリフレインする
それがまだ現実だった頃の日々

もう戻らない だからこそ 愛おしい

この想いが本当の僕なのならば
僕はこの小箱を手にするだろう
たとえ それが罪だと分かっていても

罪の音楽をまた聴くために
その小箱の螺子を 巻いたのは僕自身だった


今宵も何処からか聞こえてくる


何だかとても


とても懐かしい 哀しいワルツ 

そのメロディは止むことはなく
何度も 何度も 流れ続ける 

 












 



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