021近況報告(きんきょうほうこく)


今 何処にいる

わたしが見ているのと同じ空を そのきれいだった瞳に映しているのか

それとも
またいつもの癖で 自分の好きなことに飽きもせず
夢中になって 何かを見つめているのか

多分 後者の方だろうな
わたしにもその夢中な視線を向けて欲しかった
今更になってぼんやりと思う


わたしはいつもの通り

その後何も変化していない
本当に何も変わっちゃいない

わたしの生活に
あなたという存在が 全部消えただけだ

わらしも何か没頭できるものを見つけないと
いつまでもあなたを思い出しているようじゃ情けない

とりあえず 仕事でも始めてみるか
もう少し足掻いてみようと思ってる


いつか

そっちにいくまで

気長く待ってて・・・




026 携帯電話(けいたいでんわ)


鼓膜のすぐそばで聴こえる 君の声

本当はずっと遠くに居るのに ね

まるで「傍らに居る」ようだと

僕は今日も 大いなる錯覚を招く

でも紛れも無くそのお陰で

今日を生きてゆける

胸に温みが持てるんだよ



今度はいつ逢える?

声だけでは伝わりきれないのがもどかしい

お互いの表情が見えないのがかなしい けど

受信した電波の片鱗から

僕たちの繋がりを探そうと

僕は今夜もこの機械を枕元へ

そして一人で眠るんだよ




028 血液(けつえき)


手放さないでくださいと
伸ばしたあなたの手は冷たい

もう愛さないでくださいと
戯曲めいた台詞は使いこなせずに


どうしてあなたは冷たい声で

また優しくするのでしょう


これが嗚呼 愛の形ならば
わたしの血 あなたの血 流して交わり合いましょう

これが嗚呼 うたかたの夢ならば
私たちの愛=パラドクスだと 心に留めて唄いましょう


溜まった雫は蒼かったでしょうか
いいえ私のは赤みを帯びていた

漏れた吐息は温かかったでしょうか
いいえ私のは冷たい憎しみを孕んでいた




029 現状維持(げんじょういじ)


そばにいて

手に触れていて
でも
こっちみないで

好きでいて
笑っていて
でも
口には出さないで

曖昧なままでいいから
このままでいいから

どうか どうか

私たちをこわさないでください




030 幻想(げんそう)



過去を振り向いて一瞬見えたわたし

それはまぼろし

おそるおそる背を向ける



未来を見据えて霞んで見えるあの影はわたし?

まほろばまで続いているのだろうか

静かに目を閉じる



誰かから聞いた

今というこの瞬間は全て幻想らしい

じゃあさっき散ったこのお花も

あなたの手を握ったよろこびも、

なかったことになってしまうの?


ひそかに涙を流した

 































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