062 花火(はなび)


暗闇から
音と共に華麗に花開き
爆ぜて 散る

打ち上げ花火

人はどうして
儚く 移ろうものを好むのだろうか

生きかただって そう

長く生きることよりも
その時の一瞬の輝きに命を懸けて
潔く散ることを選ぶ 

ああ 要するに質なのだろうか

ぼんやりと思考は行き止まりにたどり着いた
そうして私もまた
目の前の花火に魅せられているというのに

次々と 花火は散っていった

夏の夜空に 燻る煙だけの
余韻を残して




067 陽光のシャワー(ひかりのしゃわー)


眩しすぎる光 そっと水をかけた
 
綺麗すぎる夕日 きっと動きはしないだろう
 
蝉が飛んだ日から時は止まった
羽音のさざめきに蓋をして
私は目を閉じる
 
いつ醒めればあそこに行ける?
まだ見たことのない所
あなたが来るのをずっと待っているの

いく宛てもない旅に出たばかり

小さなお人形畳の部屋にのこして
 



068 ひかりの庭(ひかりのにわ)


遠くで誰かの声が聞こえました

どの花たちよりもひかりを受けて
笑っていました あなたもこっちにおいで と

そうね
この燦々と輝くこのひかりの下でなら
かげを恐れる気持ちも遠のくかしら

思い切って顔を出してみたら そこは

生まれてはじめてのひかり
待っていてくれた人からわたしへの祝福のひかり

これからはもうひとりにしないでね
ずっと傍で見守っていてね

それはあたたかく やわらかく
わたしを包むのでした




070 風鈴(ふうりん)


木漏れ日は私を優しく照らし

少し爽やかになった風が肌を撫でてゆく

麦藁帽子を使わなくなった最近
今年の夏ともお別れだな と思った

その
ちりんと鳴る風鈴の音
けたたましく響く蝉の声
暑さで溶けそうなかき氷

他愛も無いものにまで憂いを感じた

本当を言うと 
もう少し留めて置きたかった

あの祭りの提灯の揺らめいた輝きを
花火の名残の煙の後先を


お疲れ様とそれぞれに
扇風機や夏布団は挨拶をして戻ってゆく

そして最後に私は
小さな箱に入った風鈴を見送った

来年の夏
ちりんと風鈴が鳴る頃

私は何をしているだろうなと

思いを馳せて




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 














 



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