最初にあのひとは 抱きしめてくれた
何もかも赦してくれて
誰だ あのひとの優しさを奪ったのは
誰だ あのひとの平穏を潰したのは
時間が止まっているように思えるのは
ただの錯覚だというのも理解出来ず
叫び喘ぐ抵抗も受け入れられない
思考が依然張り廻らない脳髄に
鈍い痛みだけリアルに感じて
死ってどういうことだっけ
とても怖くてたまらない
あのひともきっとそう
怖かったのだろうか
漆黒に呑まれてく
視界も失ってく
前にあるのは
紛れもなく
最終地点
それは
ただ
無
最期にあのひとは いつもと変わらずに
また逢いに来てね と言って
それから ああ もう現実に蝕まれてゆく
まだ
まだ
さよならも言ってないのに
ごめんなさいも言ってないのに
いってしまった